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腎臓について

公開日 2019-08-23

腎臓の刺繍

photo by [Hey Paul Studios] 外部リンク

はじめに

あなたは腎臓についてどのような印象を持っていますか?
「おしっこを作るところ」、「悪くなると透析をしたり移植が必要になる」、「知り合いに腎臓病の人はいない」などという方が多いのではないでしょうか。
腎臓がとても悪くなるとむくみ、息切れ、食欲がない、だるい、脈が乱れる、息が苦しいなどの症状が出ますが、通常は自覚症状がなく、一度損なわれた機能は元に戻せません。
腎臓が悪くなると心臓や血管、骨など体の他のところでも不都合が出やすくなります。
でもご安心ください。
尿を調べるという簡単な検査で病気がみつかり、早くから対応できれば現在の状態を保てる可能性が高いのです

実は8人に一人

厚生労働省 腎疾患対策検討会報告書 平成30年7月によると、日本国内で腎不全の方と腎不全になる危険が高い人をあわせた数は1300万人。
これは成人全体の8人に1人の割合です。
決してまれな病気ではありません。

腎臓の働き

  1. 尿を作る
  2. ホルモンに反応する
  3. ホルモンを作る

腎臓は背中側に2個あり、大きさは10~12cm x 5~6cm、そら豆のような形の臓器で、重さは2つ合わせて約300g。
体重のわずか0.5%の臓器に心臓が送り出す血液の25%が集まってきます。

1. 腎臓に届いた血液は、糸球体というフィルターを通ってタンパク質や血液細胞以外のものが濾過され、尿のもとになる原尿が一日に約180L作られます。
糸球体で濾過された原尿は尿細管を通り体に必要な水分や糖、イオンを再吸収、余分な塩分や薬、老廃物が排泄されて、尿が一日に1~2L作られます。
糸球体から尿細管までをネフロンといい、尿を作る基本構造です。
ネフロンは左右それぞれの腎臓に100万個ずつありますが、一度壊れると今の医学ではもとに戻せません。

2. 腎臓にあつまる大量の血液の中には離れた臓器からのSOS信号(ホルモン)が含まれています。
例えば心臓から水がたくさんありすぎという信号(ANP)が来れば、水分と塩分を尿として出します。
脳から水が足りなそうだと言われれば(バソプレッシン)濃い尿を作って水を体に保ちます。
副腎から血圧が下がっていると命令(アルドステロン)されれば塩と水を体に保ち血圧をあげる、骨からリンが多い(FGF-23)と連絡があれば尿中にリンを排泄するなどです。

3. 腎臓はSOSを受けるだけではありません。
酸素が足りないと判断すれば、酸素を運ぶ赤血球を増やすホルモン(エリスロポエチン)作ります。
腎臓に来る血液が減れば血圧が下がっていると判断して血圧を上げるホルモン(レニン)を出します。
カルシウムとリンを調節するためにビタミンDの働きを調節します。

腎臓の働きをまとめると体をベストな状態に保つために 1.尿を作り、2.他の臓器からのホルモンを受けて反応し3.ホルモンを出す。ということです

どのような時受診すべきか

  • むくみがある時
  • 尿が泡立つ、尿の色が普段と違う時
  • 尿の量が多くなった時、逆に少なくなった時
  • 尿検査で異常がある時
  • 血液検査でクレアチニン (Cr)、総蛋白(TP)、アルブミン(ALB)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、リン(P)、尿酸(UA)、総コレステロール (Tchol)、ヘモグロビン(Hb) などが正常範囲にない時
  • 血液検査で推算糸球体濾過値 (eGFR)が60mL/分/1.73m2 未満の時

腎臓の検査

尿検査 
尿蛋白:

尿に蛋白が混ざっているか調べる検査。(ー)が正常。
(+)以上のときは腎臓の異常が疑われるため再検査を受けてください

尿潜血:

尿中にヘモグロビン(赤血球に含まれる色素)があると陽性になります。
尿潜血が陽性の場合、腎臓、尿管、膀胱、尿道のいずれから血液が漏れている可能性があります。

尿沈渣:

尿を遠心分離し沈殿物を顕微鏡で見ます
細菌感染や腎炎の有無を調べる検査です。

血液検査
クレアチニン (Cr):

腎臓の機能(一分間に何mLの血液が、濾過されるか)の目安。
数値が高ければ機能が低下しています

推算糸球体濾過値 (eGFR) :

一分間に何mLの血液が、濾過されているかをCr、性別、年齢から計算したもの。
60mL/分/1.73m2未満が3ヶ月以上持続すれば慢性腎臓病と診断されます

画像検査
エコー(超音波)検査:

腎臓の大きさや形を調べます。

腎生検

腎臓に針を刺して組織の一部を採取し、顕微鏡による診断を行う検査。
慢性糸球体腎炎が疑われる場合やネフローゼ症候群、急に腎機能が悪くなったり、原因不明の腎機能障害の場合に行います。
腎生検を行うことで診断と治療方針が確定します。

腎臓の病気

原因による分け方

腎臓だけに障害が生じるもの(原発性)

微小変化型ネフローゼ症候群、巣状糸球体硬化症、溶連菌感染後急性糸球体腎炎、IgA腎症、膜性腎症、半月体形成性糸球体腎炎など

全身の病気が腎臓に影響したもの(続発性)

糖尿病性腎症、高血圧関連腎障害、肥満関連腎症、膠原病に伴う腎疾患、血液疾患に伴う腎疾患、妊娠に伴う状態など

遺伝性の腎疾患

多発性嚢胞腎、アルポート症候群、ファブリー病、良性家族性血尿など

経過による分け方

慢性腎臓病 (chronic kidney disease CKD)

定義

  1. 尿異常,画像診断,血液,病理で腎障害の存在が明らか。特に 0.15 g/gCr 以上の 蛋白尿(30 mg/gCr 以上のアルブミン尿)の存在が重要
  2. 糸球体濾過量(GFR)<60 mL/分/1.73 m2
  3. 1.2のいずれか,または両方が 3 カ月以上持続する 1)

CKDとは腎機能(糸球体濾過量)の低下または蛋白尿などの腎臓の障害を疑わせる所見が慢性的(3 カ月以上) に持続するものすべてを含み、腎臓が悪くなった原因は問いません
CKDという概念が重要なのはCKD重症度分類が末期腎不全になる危険度を反映しているからです。

参考 1) CKD診療ガイド2012 日本腎臓学会編 icon_pdf

急性腎障害 (acute kidney injury AKI)

1.高熱や下痢による脱水、2.腎臓に負担がかかる薬やサプリメントの摂取、3.結石や腫瘍で尿の出口が塞がれる事などにより短期間で腎臓の機能が悪化する状態。
早期に原因を取り除けば腎臓は守れますが、遅れた場合慢性腎臓病や腎不全、最悪の場合多臓器不全の原因になります。

腎不全にならないために

透析になる三大原因

糖尿病、慢性糸球体腎炎、高血圧による腎硬化症です
腎不全予防のためにこれらの病気を早く診断して適切な治療を受けることで腎不全にならずに済んだり、慢性腎臓病と診断されても進行を遅らせることができます。
糖尿病や慢性糸球体腎炎、高血圧は健康診断で見つかります。
定期的に健康診断を受け、異常があった場合は医療機関を受診しましょう。

慢性腎臓病と診断された場合

重症度により治療法が異なります。
基本は食事と運動、禁煙、内服、注射です。
症状がなくても定期的な通院が必要です。

ご自分でできる腎不全予防
  • 禁煙する
  • 減塩する 3~6g/日
  • 尿酸を下げる
  • 脂質異常症を改善させる
  • たんぱく質制限をする(栄養士さんと相談しながら)
  • メタボリックシンドロームを改善させる
  • 運動をする

参考 エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018 icon_pdf

腎臓が寿命を決める?

最後に最近注目されている、腎臓と老化の話です
テキサス大学(現在は自治医科大学)の黒尾誠先生のグループが尿細管に多く存在する”Klotho”というタンパク質を生まれつき、持たないマウスを実験で作成しました。
Klothoとは、リンを食べた時に骨が出すFGF-23 という物質を受け取り、尿中に捨てるリンの量を増やす蛋白質です。
Klothoがないマウスは、老化の特徴である動脈硬化や不妊、筋肉、皮膚の萎縮、骨粗鬆症、肺気腫、活動低下を認め、早期に亡くなりました1)
また、Klothoをたくさん発現させたマウスは寿命が伸びることを発表しました2)
一方ヒト慢性腎不全患者さんの腎臓においてKlotho蛋白の発現が著しく低下していることが知られております3)
腎臓を守り、Klothoの発現を減らさないことが若さを保つ秘訣かもしれません。

参考
1) Nature. 1997 Nov 6;390(6655):45-51. 外部リンク
2) Science. 2005 Sep 16;309(5742):1829-33. Epub 2005 Aug 25. 外部リンク
3) Biochem Biophys Res Commun. 2001 Feb 2;280(4):1015-20. 外部リンク

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